乳腺腫瘍は胸からお腹にかけて広がる乳腺に発生する腫瘍で、犬・猫共によく遭遇する病気です。
《原因》
乳腺腫瘍の発生には性ホルモンが深く関与していると考えられており、若い頃に避妊手術を受けることで予防できるとされています。犬の場合、初回発情前に避妊手術を行った場合の発生率は0.5%ですが初回発情後で8%、2回以上の発情後では26%といわれています。一方、猫では初回発情前に避妊手術を行った場合の発生率は9%、初回発情後で14%、2回以上の発情後では89%に上昇します。
《症状》
乳腺腫瘍には良性と悪性があり、犬の場合はその割合が半々であるのに対し、猫は80〜90%が悪性であるといわれています。
犬と猫の乳腺腫瘍の症状は初期段階では無症状のことが多く、乳腺付近にしこりができるだけの場合がほとんどです。しかし、しこりが成長すると表面が自壊し出血や痛みが現れることがあります。これが進むと元気や食欲がなくなり、痩せてくるといった全身状態の変化がみられるようになります。
《診断方法》
乳腺のしこりを発見した場合、まずはそのしこりだけでなく体の他の部分にもしこりがないか、またリンパ節に腫れがないかを丁寧にチェックします。その後、細い注射針でしこりの細胞を吸引して観察する細胞診を行います。良性か悪性かの診断は出来ませんが、乳腺腫瘍か(他の腫瘍や炎症等ではないか)を判断します。
加えてレントゲン検査やエコー検査を行い、肺やお腹の中に転移がないかを確認します。ただし、これらの検査だけでは確定診断ができないため、最終的には手術で取り除いた腫瘍の組織を詳しく検査し確定診断を下します。
《治療方法》
乳腺腫瘍の最も効果的な治療方法は外科切除です。その術式には腫瘍のみを切除するものから乳腺を広範囲に全摘出するものまであります。
犬の場合、腫瘍の数や悪性度、ステージ、年齢や一般状態を考慮し術式を決定します。
猫の場合はほとんどが悪性のため、肺転移がみられない状況であれば片側乳腺切除術が勧められます。両側の乳腺に腫瘍がある場合は片方の乳腺全摘出術を行った1ヶ月後にもう片方の全摘出を行います。(一度に行うと皮膚の張りがきつくなるためです)
また、未避妊の雌では生殖器疾患や乳腺腫瘍の抑制のため乳腺切除と同時に避妊手術も勧められます。
《予防法やご家庭で気を付けるべき点》
犬や猫の乳腺腫瘍は1歳未満での早期に避妊手術を行うことにより発生を大きく減少させることができます。
また、日頃から乳房あたりをよく触り、しこりがないか定期的に確認するようにしましょう。
《まとめ》
乳腺腫瘍は発生率の高い腫瘍であり転移するケースも多くみられます。愛犬愛猫の乳房あたりに異常を感じた場合には早めの受診をおすすめします。